創業ヒストリー
カーメカニックとは正反対!ピアニストを目指していた学生時代
──昔からこの仕事を目指していたのですか??
いや、実はピアニストを目指していたんです。
小学校2年生のときには“ピアノで食べていくぞ!”と決心していました。
でも我が家は経済的に苦しかったため、ピアノなんて買えるはずもなく…。
バイエル(楽譜)の最後のページに紙鍵盤が付いているんですけれど、あれがマイピアノでした(笑)。
──では、学生時代にはピアニストの夢を諦めたのですか?
高校三年生までは音大進学を夢見ていたのですが、経済的な理由から『諦めるしかない』と悟ったんです。
だから得意だった英語を活かして、大学は英語学科へと進みました。
けれどもここで、私の人生最大の大事件が勃発するんです。
もうびっくりするかと思いますが、両親がある日突然いなくなってしまって…。
だからアルバイトで学費を稼ぎながら、6年かけて大学を卒業しました。
一生食べていけるためには、手に職を! OLを経て整備士の世界へ
──カーメカニックを目指したのはいつですか?
大学卒業後は、OLや秘書などを経験しました。
両親がいなくなったので、『生涯自分の力で食べていかなければ…』と考えていたのですが、お茶汲みやコピー取りは“私が考える将来”には何の役にも立ちません。
だから、男性と同じだけ稼げるカーメカニックを目指したんです。
OL時代から『RZ35』や、『SR-X』など色々なバイクに乗っていたので、この発想に辿り着いたのかもしれません。
ちなみにメカニックとして、バイクの全日本レースに参戦した経験もあるんですよ。だから、セッティングなどもすべてお任せいただければ嬉しいですね。
──女性のカーメカニックは今でも珍しいですよね?
輸入車のディーラーに入社したのですが、14ある営業所のなかで、カーメカニックを目指す女性は私だけ!しかも、完全な男社会。
「女は現場から出て行け!」と言われ、ずっとフロントの仕事をやらされていました。
その後、工場の立ち上げなどを経験したのち、ルノーの総代理店にて10年ほど勤務することに。
ここでやっと、現場に携わることができたんですよ。
──面白い人生ですよね。ピアニストとカーメカニックは、真逆のイメージがあります。
どちらも辛い修行があるという意味では、同じではないでしょうか?ディーラーにいたころは、徹夜なんて当たり前。
ご飯をまともに食べる時間もなかったのですが、“プロへの修行”だと思えたため我慢できました。
あと、女性は一般的にお給料で洋服や化粧品を買いますよね?
でも私は毎月欠かさず、世界一の品質と言われている“スナップオン・ツールズ”の工具を買っていました。
──その理由はなぜですか?
メカニックが使っている工具って、自前なんです。
だから給料が安いうちは、みんなそれなりの工具しか買いません。
けれども私は命を乗せる車だからこそ、上質な道具で正しい整備を行いたいと昔から考えていました。
だから収入が少ない時代も、毎月5万円は、スナップオン・ツールズの工具に費やしていたんです。
アパートの駐車場から始まった、ファインファクトリー
──独立したのはいつですか?
平成8年に独立しました。
34歳のときです。あ、年齢がばれてしまいますね(笑)。
当時住んでいたアパートの駐車場での開業を経て、今に至ります。
別に輸入車専門のメカニックをうたっていた訳ではないのですが、“輸入車ディーラーでの勤務経験がある!”という私の経歴を聞いたお客さまが来店してくださるようになり、今に繋がっています。
ちなみに国産車と輸入車は、整備の際に使用する工具もメカニズム(機構)も全く異なります。
だから国産車ばかり扱っている整備屋さんだと『???』となってしまうんですよ。
別に輸入車専門のカーメカニックをうたっていた訳ではないのですが、私の経験を聞きつけたお客さまが来てくださるようになり、今に繋がっています。
──「うちのお店ならでは!」といったポイントはどこですか?
むしろ、聞きたいくらいです(笑)。
ただ私の頭のなかには『無理・できない・しかたない』の3つの言葉はありません。
もちろん物理的に無理なことはありますが、『これはできません』とは言わず、『やれるだけやってみます』と、期待にお応えできるようにしています。
だからうちでは、部品が廃盤になったコンピューター基盤の修理も請け負っているんですよ。
──お店づくりで心がけているところはどこですか?
女性でも入りやすいお店づくり…ですかね。
これまでの整備工場って、“暗い・男ばかり”といったイメージがあるかと思います。
でもこのイメージを払拭すべく、女性でも入りやすい明るい整備工場をこれからは目指していきたいです。
あと、いずれは夢だったグランドピアノを買いたいと思っています。
グランドピアノの音が響く整備工場って、素敵じゃないですか?